白鳳に身を置いて2015年08月25日 17:19

白鳳に身を置いて

奈良の博物館の 120周記念の展覧会<白鳳ー花ひらく仏教美術ー>を見に行く。
久し振りの奈良はすっかりグローバルな街になっていた。鹿に煎餅をやる家族連れの風景は昔も同じだが知らない言葉が飛び交う。厳しい残暑にも拘ずなら公園は賑っていた。

山田寺の大きな仏頭、薬師寺の月光菩薩、法隆寺の夢違観音屋阿弥陀三尊も寺院の中で拝観するのとは雰囲気が違う。丁度昔のカメラで撮ったようなイメージの仏像が、最新のカメラで撮ったようにデテールまでシャープで鮮明なのに一瞬戸惑う。
仏像はクリアになるがあの仏像を包んでいた空気が無い、無くなっていることに気づかされた。寺院のなかで拝観している時は仏像を包む空気とを体感していたのだ。場を移すことにより仏像から仏教彫刻になるのだなぁ!

国宝や重文級とは別に同時期の仏像が集められたコーナーがあった。
腰を捻って微笑む色っぽい菩薩、哀愁の眼差しが心を惹く鳥取の仏、大顔で胴の短い仏、ちょっとつり上がった細い目の菩薩、それらの人間的な表情の仏達。
それらの面影は確か自分の記憶の奥底にあるように思われる、そして生身の人間として親近感が湧いてくるのだ。
1300 年という時間を消して、、、いつの間にか自分は白鳳の時に身を置いていた。

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